【インタビュー】Siero │ 俺、もう全部やる気なんすよ

昨今のSoundCloudラップシーンにおいて、rageやplugg、pluggnb、new jazz、glo、jerkなどなど有象無象の新興ビートの集合体を指して「USアングラ」との論争的なワードを用いることがある。その言葉は、ジャンルとしての同一性を示すというよりは、もっぱら「地上」との対比を明快にするものとして、ひどく歪んだ808や弾きっぱなしのMIDI音源といった粗悪なテクスチャを伴った、反骨的なアマチュアリズムの表明として流通しているように思う。

国内でも「USアングラ」の美学を引き継ぐシーンがにわかに形成されてきている。ところが、その一角といえよう19歳のラッパー・Sieroに話を聞けば、彼にとって「アングラ」は邪道ではなく、単に王道への道筋でしかないらしい。思えば、地上も地下も王道も邪道もあってないような2020年代半ばにおいて、「アングラ」とは駆け出しの新人がラップゲームの垂直方向の物語を描くためのキーワードとなっているのかもしれない。

そう、Sieroは地下から地上への、垂直方向の物語を強く信じている。彼のラッパーとしての魅力といえば、華やかな未来を語る情熱と、その同じ夜に枕を濡らすセンチメンタルとが同居したところにあるだろう。あるいは、その嘘の吐けなさにあるだろう。きっとその言葉が夜の闇や地下の闇を貫いていくと信じて、Sieroは多弁に語る。

取材・構成 : namahoge

撮影 : 盛島晃紀

ラップに救われまくってる

Siero - めっちゃ『POP YOURS』のポスターとか置いてあって、ヤバいっす。俺、去年も一昨年も行ってて、ポスター買ったっすもん。ずっと片手に握ったままLEX最前列まで行って、終わったあとも全力で「レックスーーー!」(声マネ)って叫んで、「えっ、本物いる?」って周りザワつかせて。

Siero - そりゃあヘッズっすよ。マジでこの場所来れてよかったっす。あ、すいません、インタビューよろしくお願いします。

Siero - 生まれたのはお母さんの地元の新潟で、幼稚園通う頃からは東京にきていて。でもすぐに親が離婚して、お父さんがいなくなっちゃうんですよね。だから、幼い頃に聞いた音楽もお母さんの趣味というか、その世代の音楽ばっかでしたね。ユーミンとか、"ラブ・ストーリーは突然に"(小田和正)とか、"Change the World"(エリック・クラプトン)とか"I’m Not In Love"(10cc)とか。

Siero - CDは結構あったんじゃないすかね。ピアニストの辻井伸行さんの演奏会に連れられてったこともあるし、小3くらいで金管バンドに入って、駅前でユーフォニウム吹いたこともあるし。その頃から音楽に関係する仕事をしたいなーとか思ってました。あと、ゲーム音楽も好きでした。小学校に上がるくらいで友達から「お前まだ仮面ライダー見てんの?」って言われて、逆に何があんだよと思ったら「『ポケモンスマッシュ!』見てないの?」って、そこからめっちゃポケモン好きになって。ネットに触れたのは3DSで、「うごくメモ帳」を通じてアニソンとかボカロとか聞いて、ニコニコ動画はあんま見てなかったんですけど、流行ってるやつは知ってました。

Siero - その後、小5ぐらいで精神的な問題が出てきて。なんでだろう……俺めっちゃ小さい頃から塾みたいなとこに通ってて、それこそ中学受験とか狙ってるくらいで、人並み以上には勉強できたと思うんですよ。だけど、お母さんからはずっと勉強勉強って怒られて、キッチンで包丁向けられたこともあるし、逆に俺が包丁持って「死にたいんだけど」って泣いて、ぎゅっ(ハグのジェスチャー)みたいなこともあって。勉強しなきゃいけないプレッシャーがずっと辛くて、それが続いたからかわかんないけど、朝起きれなくなっちゃって。で、学校行けるようになっても先生から冷遇されたんすよ。授業中、問題わかったの俺だけで手挙げてんのに「誰もいないから待ちまーす」みたいなこと言われて。それで不登校になって。家出ないからめっちゃゲームするけど、それでもまだ暇じゃないですか。そこから知らない音楽をディグって聞くようになって。ゲーム音楽だと「UNDERTALE」にハマったり、「NCS(No Copyright Sounds)」ってYouTubeチャンネルでAlan Walkerとか聞いたりしてたっすね。お母さんのお古の2万円のノーパソで、4fpsくらいでマイクラしながら(笑)。

Siero - 歳近いから、そこらへんの音楽体験はたぶん同じなんすよね。俺はトラップやフューチャーベースも、ゲームのキル集で使われてるので初めてジャンル名を知ったんですよ。よく聞いてたのは、フューチャーベースならYunomiやSnail’s House、PSYQUIとか。トラップならDesiignerの“Panda”、Lil Pumpの“Gucci Gang”。あと、Migos “Bad and Boujee”はその当時のマジアンセムっすね。なんか怖い人達だけどかっけえな、みたいな感じで、それがラップなんだって知らなかったんすけどね。

Siero - その頃、ゲーム友達と通話してたんですよ。そしたらそいつが音楽流し始めて、「トラップ系だな」と思ってたら、それがKOHHの“Dirt Boys”で。「日本語でもこういう音楽あるんだ」ってまず思って、「この人のもっと聞かせてよ」って言ったら、“貧乏なんて気にしない”が流れてきて、「あれ、ラップしてる?」って。それまでラップって「チェケラッチョ」だと思ってたから、「え、トラップってラップってことなの?」みたいな、しかも超いいこと言ってるしみたいな。俺も家庭が貧乏で、小さい頃から母子家庭が理由でナメられてたんで、すごい刺さって、「こういうこと言えるようになりたいな」って思ったんすよね。それが小6のことで、まだラップしようとまではいかなかったっすけど。

Siero - KOHHから始まって、ZORNやANARCHYも好きになって、王道いってますね。あとはAwichとか唾奇とか、そのあたりの世代は全部歌えるっす。

Siero - はじまりは中2ぐらいなんすけど……もともと、小学校高学年で不登校だったじゃないですか。だから中学受験もダメだし、公立行くとしても小学校同じやつと会うの気まずいから、みんなが行かない中学に行ったんですよ。でも、当時は超太ってたから、中学入ってもブタとか言われていじめられたんですよ。物理的に殴られるのはないにしても、精神的ないじめは想像できるものは大体されて。で、中2に上がったばっかの体育の授業で、体育座りして待ってるじゃないですか。そしたら近くで「韻マンと百足が……」って聞こえてきたんですよ。「えっ、ガチかよこいつ、『韻マンと百足』って言ったよな?」みたいな。「百足は虫のムカデかもしれないけど、韻マンなんて虫はいないよな?」みたいな。ちょうどその頃「高ラ」が流行ってたんすよね。でも今までラップの話できる友達なんていなかったし、ちょうどクラス替えで俺のいじめも知られてなかったから、「好きなの?」って話しかけに行って……そっからっすね、完全に始まったのは。

Siero - その中学だと俺らの代の生徒数が少なかったっぽくて、空き教室があったんですよ。そこでサイファーしようぜって休み時間に集まったり、俺ん家の前の公園にスピーカー持ってって「8小節3ターン!」とかやって。

Siero - 俺、「高ラ」までは、「ラップってもともとかっこいい人がやってんだよな」って思ってたんすよね。失礼覚悟で言うけど、MCニガリさんを見て「俺よりデケえのに超かっこいい」って思ったんすよ。今でこそナードっぽいラッパーはいますけど、当時はまだ「陽キャしかやんないっしょ」みたいなステレオタイプが全然あったと思うんで。

Siero - MOGURAとかもいたから「じゃあ俺もラップしていいじゃん」って思えたんすよ。エンパワメントって言うんすかね、そういう姿がかっこいいなってめっちゃ思ったっす。

Siero - いや、もう完全にラップに救われまくってますよ。

起承転転転転転転転転転……

Siero - いや、まだタイプビートの存在を知らなくて、「どうやって作ったらいいんだろう?」みたいな段階で。授業中に思いついた韻とかリリックをノートに書きまくったりはしてたんですけど、音楽をやれる環境がなかったんですよ。パソコンもボロいしソフトも何を買ったらいいかわかんないし。結局、俺の頭の中では親孝行が一番にあって、勉強しなきゃっていうのもあって。そしたら中3の最後で、第一志望の都立高校に落ちちゃって、学費の高い私立に入ることになったんですよ。で、高1になって生徒会長を目指したり謎のこともしてたんですけど、同時にリリックはめっちゃ書いていて、その頃にはもうタイプビートの概念についても知っていて。XXXTENTACIONのタイプビート探してフリースタイルするみたいな感じで、頭の中では曲ができていたんですよね。けど結局、曲の出し方もわからないし、ミックスとかマイクもわかんない。曲を出したいとは思ってるけど、頭の中に溜まってるだけ。そのあたりから、「俺はこのままクソ興味ない大学入って就職すんのか、それだけは絶対できないな」と思い始めたんすよ。そしたら高2になって、また爆発しちゃったんですよね。学校もまともに行けなくなったし、あーなんもできねえってなって野宿して、めちゃくちゃ蚊に刺されて……なにしたかったのか意味わかんないんすけど、とにかく自分を取り巻く環境とか世界に鬱憤が溜まってて。その頃から家に帰らないことも増えてって。

Siero - 家帰らないで、自分で派遣とか日雇いをやってお金稼いで……よくない稼ぎ方もあったんですけど、そのお金を半分渡して当時好きだった子の家に居候させてもらったんですよ。その頃の唯一の楽しみは、休憩時間に書いたリリックとかフリースタイルをその子に聞いてもらうことで。そしたらある日、「これ出しちゃいなよ」って言われた曲があって、“Makibishi”っていう曲で。でも、どうやったら世の中に公開できるのかわかんなくて、「どうすればいいの?」って聞いたら「うちがなんとかする!」って言って、その子がLogic割って、ゲーム用のマイク使って、慣れないミックスでリリースしてくれて。

Siero - 権利的に出せないんすよ。たぶんビートがもう買われてて、上げてもすぐ消されちゃうんすよ。でも最初にリリースした日は覚えていて、17歳の誕生日でした。それで当時、ゲーム用のTwitterアカウントで「初めて曲出しました。これからラップ頑張るぞー」みたいな感じでのっけたら、「ラップ始めたんですか?僕もやってます!」って話しかけてきたのが、元21gangwxstepainくんで。彼は当時中1くらいだったと思うんすけど、俺からするとめっちゃ誰かわかんないし、なんなんだよって思ってたんすけど、「一緒に曲作りましょう!」って言ってくれるから一回やってみるかと思って。その時は居候も解消してたんで本当の家に帰って、一人だとRECの仕方もわかんないからiPhoneのボイスメモでわーって録って、それを一個一個バース区切って送るみたいな、最悪の送り方をして。しかも録り終わった後の「……ヨシッ」みたいな声も入ってたらしく、ほんとに最悪なんすけど、wxstepainくんから返ってきた俺のラップにオートチューンが乗ってて、「え、どうやったの?!」みたいな。「その年でパソコンですごいね」とか言ったら「いや全然スマホです」って、「え、スマホ?」みたいな。その時初めてBandLabっていうアプリの存在を知ったんですよ。そんなん、もう作り放題じゃないっすか。頭の中には100曲くらいストックあったんで、全部録音しまくって、サンクラに最低でも週に1曲、実際は2曲とか5曲とか出すようになって。

Siero - 17歳の時「18歳になるまでに成功しないと終わるぞ」って焦ってたんですよ。大人になったらヤバいって。でもある日、友達から「こういう曲を出し続けても売れるわけなくね?」みたいなこと言われて、それがめっちゃ悔しくて、すごい考えたんですよ。そしたら俺、自分のことだけを考えて歌ってたんすよね……その時って、ただただ叫んだり激しいこと言ったりして、鬱憤晴らしてただけなんすよ。けどそうじゃなくて、人のこととか、俺の背負ってるものを歌った方がいいじゃないかって、てか、そういう姿勢に憧れてヒップホップ好きになったんだよな俺って思って。そこで作ったのが“Don't play with me”っていう曲で。Juice WRLDの“Robbery”をサンプリングした曲なんすけど。毎週リリースしてたのを止めて、ありがちなんすけど「次出す曲こそマジだから拡散してくれ」ってストーリーで言って。そしたらめっちゃウケよくて、「お前ヤバいよ」って超言ってもらえたし、もともとサンクラでやってた人からも知られるようになってきて。その後出した『THE GOAT TAPE 2』っていうミックステープでも、gloビートを初めて使って「俺の時代にするぞ」みたいな曲を作って、それもめっちゃウケて。

Siero - 転機っていうか、俺の中ではずっと起承転結の「転」を自分で作りまくってる感じっすね。最初の頃も、Yokai JakiをビートジャックしたラップをTikTokにのっけて客層広げようとかもしてて。初めてサブスクに出した“SIERO THE GOAT 3”っていう曲もMV作ってYouTubeに出して、友達に「17歳のラッパーSieroが出したMVがやばすぎる!」(裏声)みたいな、赤の他人のフリした動画を作ってもらってTikTokに流したりとかして。

Siero - 消したっていうか……消したんですけど、今となってはバックアップも無いんすよ。“Hate me (Broken)”っていう曲でも歌ってるんですけど、“SIERO THE GOAT 3”を出す一週間前くらいに、スマホぶっ壊しちゃったんすよね。俺、今もそうなんすけど、めっちゃ発狂しちゃうんですよ。歌詞とかすげえ書いててデータも入ってるiPhoneが、なんか悪いもん溜まってるっていうか、すごい気持ち悪くなって、我慢しきれなくて、思いっきりバーンって。だから、アーカイブとかもないんすよね。

〈洗濯物干すのもHIPHOP〉を拡大解釈して

Siero - 変な話だけど、USのそういうビートはめっちゃ日本人から入ったんですよね。サンクラで何が流行ってるか見といたほうがいいなと思って、Hip Hopチャートをチェックしたんすよ。そしたらJellyyっていうやつがめっちゃランクインしてるんですよね。で、ちょうど“Opps”っていう曲が出てて、それがgloビートだったんですよ。当時はビートのことなんもわかんなかったんすけど、こいつのやってる音楽が新しいことだけはわかる、みたいな。もともと俺、壮大なオーケストラ音楽みたいなのが好きで、チープなたとえかも知んないけど、ラスボス感みたいなのが好きなんすよね。カーンって鐘の音とか、あれがめっちゃぶっ刺さって。そっからJellyyにコンタクト取って「へーpluggnbっていうのあるんだ、よくわかんねーけど聞いてみるわ」みたいな感じでいろいろ教えてもらって。それで今“Opps”は俺も入れてもらったバージョンで上がってますね。

Siero - そもそも自分にとってサンクラは投稿するためのプラットフォームなんで。TikTokの流行りから入って『Whole Lotta Red』(Playboi Carti)知ったくらいなんすよ。今はOsamasonとかNettspendは出た新譜追ってますけど、アングラに傾倒してるっていうわけではないっす。むしろ好きな音楽しか聞いてないっすね。ラップはもちろん好きっすけど、バンドだったらbetcover!!とか、the bercedes menzとか。俺はZORNの〈洗濯物干すのもHIPHOP〉(“My Life”)を拡大解釈して、結局は自分次第でなんでもありだと思ってるんすよ。そもそも最初買ったCDがYunomi『ゆのもきゅ』で、次の日にLeon Fanourakis『CHIMAIRA』が届いたみたいなルーツなんで、どういう音楽も音楽は音楽だし、「このビート選んだのはUSアングラだから」とかはないっすね、正直。

Siero - あれはタイプビート漁ってて、「このビートめっちゃいいなー」と思ってずっと聞いてたんですよ。それこそ眠れない夜とかに。で、いつだったか「これラップのせたら俺もループで聞けるし、しかもサブスク出せばお金入るやん」と思って作ることにして。俺はいつも歌詞を一番大事にしてるんすけど、あの曲に関しては、いっつも聞いてたビートだから気持ちよさを重視してて、自己満っぽいんすよね。でもそれがめっちゃ伸びたから、何がウケるかよくわかんないっすよね。

ピーナッツくんの中身も見たい

Siero - うーーーん、それに関しては一個の答えじゃ収まりきんないと思うんですけど……なんだろうな、考えていいっすか。

Siero - やっぱ不登校みたいな、自分とずっと向き合う時間があったから、自問自答を繰り返していたんすよね。俺ってまず最初に歌詞を書くんですよ。その作詞の過程が自分との対話になってるんすよね。それってヒップホップと関係してることだと自分的には思ってて。リアルでいること、自分に忠実でいることって一番大事じゃないですか。なにか強いこと言うなら「それ本当に言いたいことなの?」って真剣に考えなきゃいけないじゃないですか。だから、歌詞を考えてる過程が自浄作用みたいになって、だんだん「まだそんなに焦んなくていいんじゃね」って思えてきたのかもしんないっすね。

Siero - あと、そういう時間を通して、お母さんの愛情にあらためて気づけたのも大きいっす。家出している間も、たまに家帰ったらお母さんが「おかえり」ってご飯出してくれて。冷静になって考えれば、貧乏でも女手ひとつで俺のこと育ててくれて、めっちゃ立派な人だし、その人の愛に背を向けたくないなって思ったんすよね。

Siero - そうっすね。やっぱそれが一番きっかけとしてデカいのかなー……本当いろいろあると思うんすけど、自分でもう「変わっていくしかないよな」って思うようになったんすよね。鬱々として生きていくのも嫌だしな、っていうのもあるし。まだ向き合ってる最中なのかもしんないっすけど。

Siero - やっぱ自分的に隠すのはできないから。自分を裏切ることはできないし、等身大の自分で評価されたいって思ってるから、泣いたら泣いたって書くし、死にたいって思ったら死にたいって書くし。

Siero - 『Not In Streets』の時もまだ全然迷ってて、いろいろ。俺、音楽やる上であんまロールモデルがいないなって思ったんすよね。「俺ってどういう売り方するんだろう」みたいな。サンクラ追ってなかったから、LEXやTohjiがどのタイミングでどう伸びたのかとか全然知らないし、俺ってそもそもLEXやTohjiの路線なのか、俺ってJin DoggなのかKID FRESINOなのかBIMなのか、みたいな感じになっちゃって。だから、『Not In Streets』はスキット以降の曲でめちゃくちゃ内省的なことを書き綴ってるんですよ。でも、正直な気持ちを書くっていうのは、これからもそうだと思います。別にお金稼いだら嬉しいって書くんじゃないかな……あー、でも、どうだろう、“4:43”って曲でも歌ってるんですけど、解放されるのと束縛されるのって、同時に生まれると思ってるんすよ。一個何か叶えたら絶対一個新しい欲望ができると思うんすよ。家出てる時はその日食える飯があるだけでめっちゃ嬉しかったっすけど、冷たい飯でも満足してたっすけど、今、めっちゃ焼き肉食いたいっすもん。

Siero - 俺は結局、欲望まみれな人間だし、そういう意味ではスタンスずっと変わらないんじゃないかな。成功したならしたで、「あの日悩んだ俺をまだ見つめてる」みたいなこと書くっすよ、絶対。

Siero - 友達からもめっちゃ情緒不安定とか言われるけど、自分的には落ち込みやすくて喜びやすい、感受性が豊かなだけなんじゃないかなって。別にみんなと変わらん人間だと思うんすけど、みんなって無意識で抑えてるところあるじゃないっすか。人前で泣いたらヤバい奴に思われるとか。俺も人前で視線感じてパニックになるとか無限にあるからわかるけど、そんな変わんないんじゃないっすかね。俺は貧乏だけど、私立高校に行ってたこともあるし、今も美大に入ってるんすけど、でも貧乏だったと感じた俺は俺だし、「みんなそんなもんなんじゃないの?」って……てか昔、俺って周りの人にめっちゃ嘘ついてたんすよ。それをすごく後悔していて、嘘ついてる時の俺って、本当の自分がなんなのかわかんなくなるんすよ。どの自分が正解なのかわかんなくなるんすよ。そういうのを経て、夢叶えたいんだったら自分を信じなきゃダメだよなって。自分のことも信じられない人間のことは、リスナーも信じられないじゃないですか。

Siero - 俺、swettyくんと友達なんですけど、普通にマジで悔しくて。許せないっすよね。一個下なのに調子乗ってるんだよな、あいつ……っていうのは冗談なんすけど、とにかく『POP YOURS』出ないことには話になんないっすよね。俺は『POP YOURS』で彼女と社交ダンスをしたいんですよ。ビート流して社交ダンスして、2番目のサビから歌い始めるってことをしたいんですよ。

Siero - てかもう、俺、全部やる気なんすよ。「ニートTokyo」で何言うかってもう決まってるし、「漢 Kitchen」で漢さんにどんな態度するかももう決まってるんすよ。KOHH(現 千葉雄喜)と曲作りたいし、Fuji Taitoと曲作りたいし、MIKADOと曲作りたいし、LEXと曲作りたいし、Skrillexと曲作りたいし、『FUJI ROCK』にも出たいし『MELLOW CRUISE』にも出たいし『SUMMER SONIC』にも出たいし『りんご音楽祭』にも出たいし『Rolling Loud』にも出たいんすよ。「漢 Kitchen」出たら餃子はマストでチャーハンかエビチリ作る気満々なんすよ。ほんと夢しかないんすよ。Elle Teresaちゃんの「Elle Kitchen」でも出たいし、ピーナッツくんとも曲作りたいし、ピーナッツくんの中身も見たい。

Siero - 全部やれるかわかんないっすけど、とにかく俺は自分がやったことをベーシックにしたい。俺が誰かのロールモデルになりたいし、俺が一番先頭を切り開きたい。編み込みの髪型でもないし喧嘩もお母さんとしかしたことないけど、マジで取りにいく気持ちだけはある。「夢があった方がいい」っていうのは、お母さんにずっと言われてきたことでもあるんで。

Siero - 全然自分から「ラップやってる」とは言ってますし、それこそ最初のサブスクのリリース料金も払ってもらったくらいなんすけど、Sieroって名前だけは言ってなかったんですよ。せっかくならデカいステージが決まった時に「この日空いてる?幕張来てよ」とか言ったほうが絶対かっこいいじゃないっすか……でも、今年のことなんですけど、普通にTikTokで流れてきたらしくて、「これあんた?」って聞かれて(笑)。「嫌ならブロックしていいですよ」って来たけど、「どうせ有名になるから見てて」って返して。それからも「申し訳ないとか思わなくていいから、お金出してあげるから」って、もう感謝してもしきれないっすよね。お母さんは結構な高齢出産で、体にも負担かけちゃったし、そろそろいい思いさせてあげたいっていうのもあって。

Siero - 俺思ってるんすけど、俺が周りの人だけでも幸せにしたら、俺のこと見た周りの人がその周りの人を幸せにしてって……めっちゃ綺麗事すぎるかもしんないけど、そうなったらいいなって思うっすね。

RELATED

【インタビュー】PRIMAL『Nostalgie』 | ラップは自己主張

PRIMALは、00年代の国内のインディ・ラップの興隆を象徴するグループ、MSCのオリジナル・メンバーだ。私はかつてPRIMALのラップについてこう記した。「いくつもの問いがあふれ出しては、彷徨っている。そのことばの放浪が、PRIMALのフロウの核心ではないかと思う。(中略)脳内で延々とループする矛盾と逡巡が、オン・ビートとオフ・ビートの狭間でグルーヴを生み出し、独特のリズムを前進させる。目的地を定めないがゆえのリズムのダイナミズムがある」。 1978年生まれのラッパーの14曲入りのサード・アルバム『Nostalgie』を聴いてもその感想は変わらない。声音やフロウのキレには驚くほど衰えがない。そして、労働者、家庭人、ラッパーという複数の自己のあいだで生じる葛藤や懊悩を豊富な語彙力を駆使していろんな角度からユーモラスにラップする。リリックもライミングも相変わらず支離滅裂で面白く、若いころにハードコアで鳴らしたラッパーの成熟のあり方としてあまりにも特異で、それが本作の最大の魅力だ。 彼は、2007年に『眠る男』、2013年に『Proletariat』という2枚のソロ・アルバムを発表、『Nostalgie』はじつに12年ぶりのアルバムとなる。2016年に東京から移住した釧路/札幌で制作された。札幌のヒップホップ・グループ、Mic Jack Production(以下、MJP)のビートメイカー、DOGG a.k.a. DJ PERROやHalt.、あるいはMichita、ながさきたけし、荒井優作らがビートを提供、YAS I AM、MAD KOH、RUMI、漢 a.k.a. GAMI、BES、SAWといったラッパーが客演で参加している。カヴァーアートは、MSCのメンバーで、グラフィティ・ライターのTaboo1が手掛けた。 このインタヴューは、PRIMALと、彼の盟友、漢の対談動画の収録直後に、ふたりと仲間が青春時代を過ごした東京・高田馬場の居酒屋でおこなわれた。PRIMALはいま何を考えているのだろうか。

【インタビュー】SEEDA『親子星』| お金にしがみつかず輝く

日本のヒップホップ/ラップ・ミュージックでは近年も充実したアルバムの発表が続いているが、一方、リスナーが世代で二分化される傾向も感じる。

【インタビュー】Mndsgn | 音楽はただ生きてることの副産物

LAのビートシーンを代表するアーティスト、Mndsgn(マインドデザイン)

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。
OSZAR »